スポンサーサイト

一定期間更新がないため広告を表示しています

| スポンサードリンク | - | | - | - |
小さいおうち
評価:
中島 京子
文藝春秋
¥ 1,660
(2010-05)
コメント:読了後、即読み直し決定。

JUGEMテーマ:読書
 
直木賞(第143回)を受賞したことで話題になった作品。

昭和初期、中級よりちょっと上のクラスの家庭に仕えたことのある元女中が、現在になって過去を振り返り、その思い出をノートに綴っているというもの。

こういう書き方をしてしまうと、戦前のやや明るい日本の庶民の話のように感じられるかもしれないけれど、そんな平坦な話ではないのがポイント。

田舎から出てきた女中が、東京西部の私鉄沿線に建つ洋館に暮らす家庭に仕えるのだが、登場する人物で嫌な感じの者はいない。何かに窮乏するという話でもない。描かれる風景は、戦争が生活に影響を及ぼしてくる間際まで実に「平和」だ。

思わず括弧付きで書いてしまったとおり、昭和初期という時代のそういう雰囲気についての異論もあるかと思う。それに対する回答を現在の女中が述べるために、甥がツッコミ役となる。平坦な回想とは違う構成の妙だ。当初はややわざとらしいかと感じたのだが、読み終えるとそれもまた計算されたものと思えてくる。終わりのほうにも仕掛けがいくつか用意されているためだ。

人が何かを語る時、100%客観的に語ることは絶対に無理だろう。この本は、個人が語るひとつの歴史においてもそうだよね…ということをうまく提示してくれている。自慢や嘘にまみれた話ではなく、意識しないで語るものにもその人の考え方や感情は作用している。そのあたりの描き方のバランスが絶妙だったなと感心したのはすべてを読み終えた後だった。決して小難しい話ではなく、推理小説のように伏線×伏線=結末という話でもないが、改めて読み直さないといけない一冊になった。


| hisamitsua | 読書日記☆☆☆☆ | 23:44 | comments(0) | trackbacks(0) |
スポンサーサイト
| スポンサードリンク | - | 23:44 | - | - |









トラックバック機能は終了しました。